不動産業界ではトラブルが多く、詐欺などの犯罪行為にまで及ぶ事があります。
不動産投資詐欺といわれるかぼちゃの馬車事件は素人を騙した事件ですが、中にはプロ中のプロである大手不動産会社が騙された詐欺もあります。
最近の事例だと積水ハウス地面師事件がありました。
この記事では、積水ハウス地面師事件を分かりやすく解説致します。
積水ハウス地面師事件とは?

積水ハウス地面師事件とは、2017年に起こった詐欺事件で、廃業した旅館である海喜館の土地所有者を装った犯人の土井被告を中心とする詐欺グループが、大手の住宅メーカーである積水ハウスへ土地取引売買を持ちかけ、約55億円をだまし取ったというものです。
この土地の実際の所有者は、当時末期がんで入院中だったため、土地売買取引を行うことは不可能でした。
不動産詐欺に使われた土地の詳細

詐欺の売買取引が行われた土地は、東京都品川区の西五反田にある土地で、JR五反田駅から徒歩数分という一等地でした。
広さは約2,000㎡あり、時価は80億円~100億円の価格がつけられていました。
東京オリンピックの開催によって土地の価格がさらに高騰すると見込まれていた土地だったことも、事件が世間に大きく注目された理由でした。
詐欺以前からこの土地を欲しがっている不動産会社は多かったようです。
積水ハウスはなぜ騙されたのか?

2017年4月に、土地所有者の財務担当者と名乗る土井被告が、その土地を60億円で購入したという男性を積水ハウスへ紹介し、そこにマンションを建てたら入居希望者や購入希望者が大勢いるという理由でスピード契約を持ちかけ、積水ハウスから70億円をだまし取ろうとしたのです。
通常の土地売買においては、こうしたなりすましや詐欺を防ぐために、本人の身元確認に加えて、印鑑証明書や土地の権利書などが必要です。
これらは積水ハウスの司法書士が確認していますが、残念ながらパスポートや権利証などはすべて精巧に偽造されたもので、経験を積んだベテラン司法書士でも、偽物だと見抜くことができませんでした。
なぜ大手の住宅メーカーがこうした詐欺にアッサリ引っかかってしまったかというと、積水ハウスの担当者が、この詐欺グループの一人と以前からの知り合いだったために、信用してしまったことも原因の一つと言われています。

顔見知りだからということで、本来なら行うべき厳しい調査を行わなかったことも、詐欺被害に遭った原因となりました。
ただし、取引中に9回詐欺だと気が付くチャンスがあったといわれています。
積水ハウスは、2017年4月にこの売買契約を行い、手付金として12億円の預金小切手と2億円の現金を詐欺師の土井被告へ支払いました。そして売買契約における残債は、7月末までに支払うものとしました。
この詐欺取引の事実を知り、驚いたのは土地の本当の所有者です。
2017年5月に入ってから積水ハウスへ内容証明を送りましたが、積水ハウス内では既に契約の際に本人確認も済ませていたと考えていたため、この内容証明については何者かが売買契約を阻止しようとしていている怪文書とみなし、邪魔される前に早急に契約完了しようと動いたのです。
詐欺師から土地の所有者が内輪揉めしていると嘘を吹き込まれていたことも怪文書と思ってしまった原因のひとつです。
この取引が詐欺だと判明したのは2017年6月に入ってからで、詐欺の土地売買取引がすべて終了した後のことでした。
土井被告が添付書類として使っていた国民健康保険証のコピーが、偽造だと分かったことをきっかけに、事件が発覚したのです。
積水ハウスへは、法務局から登記申請却下が伝えられました。
損害額は?

積水ハウスがうけた被害総額の総額は、本来なら70億円のはずでした。
しかし実際の被害総額は、55億5,000万円でした。
その理由は、70億円のうち約7億円は、建物解体までの留保金とされていたことと、詐欺師が土地売買契約のプロセス中で、積水ハウスが建設したマンションを購入する代金として7億5,000万円の小切手を返却していたために、若干は詐欺被害を小さく抑えることができました。
こればかりは、不幸中の幸いと言えます。
犯人と犯人の判決について

積水ハウス地面師事件の犯人グループは、17人が逮捕され、そのうち主犯格は3人といわれています。
長い裁判の結果、2020年に入ってから東京地裁によって判決が下されました。
中でも中心的な役割をした土井淑雄被告には、検察側の求刑懲役15年に対して、懲役11年の判決が言い渡されました。
犯行後に名前を変えてフィリピンへ逃亡したカミンカス操被告も主犯格のひとりで、検察側の求刑懲役14年に対して、懲役11年の判決が言い渡されました。
また、国内の地面師の中でもトップレベルの大物と呼ばれる内田マイク被告もいました。
彼は事件があった当時には、別の地面師詐欺で網走刑務所に服役中でしたが、五反田の土地は以前から目を付けていたために、詐欺に関与したと考えられています。
偽造書類を調達した人物や、架空口座を準備した人物など、この詐欺事件にはたくさんの人が関与しており、それぞれが細かく細分化された役割を担っていました。
積水ハウスではクーデターが勃発

被害に遭った積水ハウスでは、社内でもこの土地取引に乗り気で早急な契約を進めた社長と、当時の会長との間でお家騒動が起こりました。
この事件に対する責任問題を追及する旨のお家騒動だったわけですが、社長の解任を提案する会長に対して、どういうわけか役員会では会長を解任する結果に終わりました。
調査報告書には社長責任が明記されていたとうことで、隠蔽のための解任だと株主から大反発が起きました。
これに関しての書籍が出版されているので興味のある方は読んでみてください。
まとめ

地面師詐欺は積水ハウス以外の大手企業でも起きています。
大手企業の取引の場合、取引額も桁外れで被害額が物凄い金額で注目されますが、個人投資家でも地面師詐欺に遭う可能性はあります。
プロでも騙されてしまうわけですから、不動産取引の際は最善の注意を払わないといけません。
不動産詐欺被害に遭わないためにも、このような事件があったこと、事件究明から分かる手口などを学んでおくと良いと思います。

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