【スルガ銀行不正融資問題】かぼちゃの馬車事件を分かりやすく解説

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かぼちゃの馬車事件を分かりやすく教えてください。

10月はハロウィンの時期!ハロウィンといえば「かぼちゃ」をイメージしますが、不動産業界の「かぼちゃ」といえば「かぼちゃの馬車事件」があります。

かぼちゃの馬車事件はスルガ銀行が関与した平成最大の金融不祥事とも言われる社会問題となった事象です。

2021年現在、被害者救済がされていない部分が残っており、スルガ銀行不正融資のデモが頻繁に行われています。

※追記 2023年3月現在かぼちゃの馬車事件は解決し、アパートマンションの不正融資問題が未解決の状態です。

本記事ではこの「かぼちゃの馬車事件」を分かりやすく解説します。

目次

かぼちゃの馬車事件とはどんな事件?

かぼちゃの馬車事件は、「かぼちゃの馬車」という女性専用のシェアハウスのオーナーに対して、

  • 融資元の「スルガ銀行」
  • 販売元の「不動産会社」
  • 物件の管理会社「株式会社スマートデイズ」

が不正を行ったことで起きた不動産投資トラブルです。

不動産売買関連・サブリース関連のトラブルに該当します。

かぼちゃの馬車では、不動産投資を行うオーナーに対して、30年間の家賃収入を年8%以上の利回りで保証していました。

これはサブリースという契約で、「一括借り上げなので、オーナーは家賃徴収の手間や物件管理などを行う必要がなく保証期間は一定の家賃が何もしなくても入ってきます。」という謳い文句で勧誘が行われていました。

オーナーからしたら労働なしに家賃が入ってきてローン返済が賄えた上に手元に現金が残るのであれば、大きな魅力がある契約方法だと多くの人が思ってしまうのではないでしょうか。

ここで引っ掛かればシメシメといった形ですが、中にはある程度知識のあるオーナーもいて疑問点を指摘した方もいるようです。

家賃相場とはかけ離れた高い賃料で設定されていたため、不審に思ったオーナーが質問すると、利益を得る方法が賃料収入だけではなく、職業紹介の利益も含まれるという表向きの理由で論破していました。

このかぼちゃの馬車の入居者ターゲットは「地方から東京に出てくるお金のない女の子」で職業斡旋もセットにして行うというビジネスモデルだったのです。

しかし、これは仕組まれた罠でした。

2017年にはスマートデイズは入居者の減少という理由でオーナーへ支払う賃料の減額を要求し、2018年には賃料の支払いがストップし、経営破綻に陥ってしまいました。

破綻前提のビジネスモデルであったことから、計画倒産だという声もあがっています。

オーナーにとっては、保証されるはずの家賃収入がゼロになってしまっただけでなく、ローンだけが残り、個室タイプのアパートではなくシェアハウスという特殊な集合住宅を建築したことによる、「借主が見つかりにくい」というトラブルにも直面することになってしまいました。

サブリースによる家賃が支払われている間は入居者が何人いるか知らずに運用出来ますが、スマートデイズの破綻により蓋を開けてみたら一人しか入居者がいなかったというオーナーもいたようです。

しかも衝撃的な事実なのですが、かぼちゃの馬車はシェアハウスといえない物件でこの点でも苦労することになります。(この話は後で解説致します。)

このようにスマートデイズが破綻したことにより、オーナーはローン返済が出来なくなり、不祥事が表面化しました。

この不祥事は「かぼちゃの馬車事件」や「スルガショック」などと呼ばれています。

かぼちゃの馬車はシェアハウスではなかった

かぼちゃの馬車はシェアハウスとして販売されていましたが、実際にはシェアハウスといえる物件ではありませんでした。

スマートデイズが破綻し、オーナー自ら客付けをするためにシェアハウス募集サイトに掲載しようとしてもシェアハウスの基準を満たしていないため掲載してもらえないという事態がありました。

かぼちゃの馬車の間取りには共用リビングがなかったためです。

スマートデイズは、“トラブルの元になる「リビング」はあえて作りません”という資料を作成していましたが、共用リビングのない4畳半ほどの狭い部屋が並ぶ物件は簡易宿泊所やカプセルハウスのようなもので、シェアハウス特有のメリットは得られない物件でした。

シェアハウスとして募集をかけるために部屋を解体しリビングを作ったオーナーもいるようですが、解体費やリフォーム費用がさらに出費が嵩んでしまうためこの手段を選択できないオーナーも多くいたと思います。

スマートデイズの悪事は他にもある

スマートデイズは、入居者から家賃収入を得るほか、工事を施工する業者からコンサルティング費用として多額のキックバックを受け取っていました。

キックバックに関しては法律的には問題はありませんが、相場より遥かに高いキックバックが問題になっていました。

一般的なキックバックは建築費の2%~5%程度です。しかしスマートデイズの場合には、なんと実際にかかった建築費の50%をキックバックとして受け取っていたのです。

その費用は当然、オーナーが負担しているわけで、結果的にその物件は「質に合わない割高な物件」となってしまったのです。

スルガ銀行も不正に加担していた

かぼちゃの馬車事件は、他にも問題がありました。

それは、融資をしていたスルガ銀行も不正に関わっていたという点です。

本来なら、不動産投資の経験がない個人やサラリーマンなどは、銀行の審査に通ることは決して簡単ではありません。

しかしスルガ銀行は、スマートデイズと結託して不正に関わり、簡単に審査に通して融資を実行していたのです。

その際には、審査書類の改ざん、手付金の領収書を改ざんするなど、かなり悪質な手口が使われていました。

東証一部上場企業であるスルガ銀行が不正を行っていたとは考えられないと思う人もいるでしょう。

しかしこれらの不正に加担していた事実はスルガ銀行第三者委員会の調査報告書で公表されています。

スルガ行員が不動産業者へ不正を指示していた内容は第三者委員会の報告書にも記載されていますので読んでみると非常に悪質であったことが分かると思います。

スルガ行員が業者に送った内容の一例
  • エビ15Mぐらいでお願いします
  • 材料送ります
  • レントロールは利回り8%以上で仕上げてください

※エビは海老ではなく、エビデンスの事ですのでお間違えの無いようお気を付けください。

かぼちゃの馬車事件の被害者人数と被害総額

かぼちゃの馬車事件では、被害者は1258人、融資総額は2035億円とスルガ銀行が発表しています。

この数字を単純に計算すると、1人当たり1.6億円以上の被害を受けていることになります。

こうした被害を受けても、不動産投資家の中には、しっかりと対応したことで経営を立て直すことできた敏腕投資家もいます。

かぼちゃの馬車の契約時期が早い人の方が物件そのものに価値があったり、立地が良かったり、サブリースの家賃を受け取る期間が長かったという話もあり、投資家の実力だけでなく運もあったと思います。

しかし、経験や知識がほとんどない素人の不動産投資家で、本来なら銀行の審査にも通るべきではなかった人にとっては、被害から立ち直ることは、決して簡単なことではありません。

これは素人が何の知識も持たず、準備もせずにエベレストに登るようなものです。立て直せない方が普通なのです。

かぼちゃの馬車事件の調停結果

かぼちゃの馬車事件は、マスコミも大きく取り上げたため、全国的に多くの人が知る事件となりました。

はじめは不動産投資に失敗した人達のような見られ方でしたが、スルガ銀行や不動産業者から不正の証拠が出てくるにつれ、単なる投資の失敗ではなく不動産投資詐欺のような不祥事として認識されていきました。

被害者が団結したことでスルガ銀行と対決する戦いが始まり、複数の弁護士が参加し弁護団が作られました。

中でも弁護士の河合弘之先生が率いるスルガ銀行・スマートデイズ被害弁護団(SS被害弁護団)が有名ですが、他にも弁護団はあります。

SS被害弁護団による第一次調停は2019年の秋にスタートしました。

反省の色を示さないスルガ銀行に対しあらゆる手を使い、前代未聞の「代物弁済」を勝ち取りました。

これはスルガ銀行が調停で不正を認めたことで、オーナーがかぼちゃの馬車物件を手放すことを条件に借金をゼロにするという完全勝利でした。

第一次調停が被害者と合意に至ったのは2020年の3月、その後2020年8月11日に第二次調停を申込み2021年3月に第一次調停と同様の和解が成立、2021年8月31日に第三次調停を申込み、現在は第三次調停行われている最中です。

※追記 2022年4月に第三次調停の和解が成立しました。

調停に申し込んだ被害者は合計951人、融資総額は1532億円でした。

SS被害弁護団の調停状況
  • 被害者数
  • 第一次調停:257人
  • 第二次調停:285人
  • 第三次調停:409人
  • かぼちゃの馬車物件数:1218棟
  • 融資総額:1532億円

残りの被害者約300人はどうなったのかというと、SS被害弁護団以外の弁護団や弁護士に依頼をしているパターン、既に自己破産しているパターン、自ら運営していくことを選んだパターン、最後に非常に悲しい事実でありますが自死を選んでしまった被害者もいますのでこれらのどれかに該当します。

まとめ

かぼちゃの馬車事件は、不動産業界だけでなく金融業界にも大きな衝撃を与え、その結果、金融機関の融資基準が大きく見直されることになりました。

真っ当な不動産賃貸業を考えている投資家でも、サラリーマンの副業では審査に通りづらくなってしまうなど、多くの人がマイナスの影響を受ける結果となったのです。

また、物件を購入しにくくなるということは、不動産を購入する人の数が少なくなったということでもあります。

つまり、物件はあっても買える人の数が減り、価格を落とさなければ不動産が売れない状況を作り出したのです。

その結果、地方不動産や1億円~3億円程の個人が購入出来る範囲の大型物件は不動産価格の下落につながりました。

かぼちゃの馬車の調停は第三次で終了と発表されているので、現在進行中の調停で終了となる見込みです。

しかし、スルガ銀行が関わった不正融資はかぼちゃの馬車事件だけではありません。

かぼちゃの馬車はスルガ銀行が融資した不動産投資ローンの極一部です。

アパートやマンションといった一棟物件はかぼちゃの馬車事件の約4倍あるといわれています。

今後はアパートやマンションの不正融資に対する戦いが激化していく予想と予想しています。

不正に加担したスルガ銀行や不動産業者が被害者を救済することを願い、さらに不正がなくなることを切に願います。

編集部

かぼちゃの馬車事件の被害者が『かぼちゃの馬車事件 スルガ銀行シェアハウス詐欺の舞台裏』を出版しています。
より詳しく知りたい方は是非読んでみてください!

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